下痢
症状
下痢の症状は、便の性状や頻度に変化が生じる状態を指し、通常は水分量が多く、緩いまたは水様の便が頻繁に排出されることが特徴です。下痢は、単なる一過性の問題から、深刻な疾患の兆候までさまざまな原因があります。
下痢の主な症状
便の形状
水様便:水分が多く、固形分がほとんどなく、流動的な便。
軟便:少し固形分があるが、通常よりも柔らかい便。
排便回数の増加
通常よりも頻繁に便意を感じ、1日に何度も排便することが多い。急に強い便意を感じることがよくあります。
腹痛や腹部不快感
腹痛や腹部膨満感(膨れる感じ)が伴うことがあります。痛みは便意を感じる直前に強くなり、排便後に軽減することもあります。
けいれん様の痛み(痙攣性痛)が起こることもあり、これは消化管の痙攣によるものです。
便に血液や粘液が混じる
特に炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)や感染性の腸炎(細菌性のもの)などでは、便に血液や粘液が含まれることがあります。これらは症状の重篤さを示唆することがあり、早急に診察を受けてください。
発熱
感染性の下痢(細菌、ウイルス、寄生虫など)が原因の場合、発熱を伴うことが多いです。
脱水症状
下痢が続くと、体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が失われ、脱水症状を引き起こすことがあります。
脱水症状の兆候:口の渇き、乾いた皮膚、疲労感、めまい、尿量の減少、暗い色の尿など。
食欲不振
下痢による腹痛や不快感から、食欲が減少することが多いです。
疑われる病名
下痢は多くの疾患や状態によって引き起こされる症状で、軽度のものから重篤な疾患に至るまで、原因はさまざまです。
感染症による下痢
ウイルス性下痢
ノロウイルス感染症
特徴:激しい下痢、嘔吐、発熱、腹痛。冬季に流行し、集団感染が起こりやすい。
ロタウイルス感染症
特徴:乳幼児や小児に多く見られる。水様便、発熱、嘔吐を伴う。
アデノウイルス感染症
特徴:発熱、下痢、咳や喉の痛みを伴う場合もある。特に冬に流行する。
細菌性下痢
サルモネラ感染症
特徴:食肉や卵が原因となることが多い。下痢、発熱、腹痛、吐き気。
カンピロバクター感染症
特徴:汚染された鶏肉や水が原因となる。下痢、発熱、腹痛、血便を伴うことがある。
大腸菌O157(病原性大腸菌)
特徴:激しい腹痛、下痢(しばしば血便を伴う)、発熱。血管内での合併症を引き起こすことがあり、HUS(溶血性尿毒症症候群)を引き起こすことがある。
腸炎ビブリオ感染症
特徴:海産物が原因となる。激しい下痢、腹痛、発熱、血便。
シゲラ感染症
特徴:下痢(しばしば血便)、腹痛、高熱を伴う。旅行歴がある場合に疑う。
寄生虫感染症
ジアルジア症
特徴:水様便、腹痛、膨満感、体重減少。特に旅行歴がある場合や衛生状態が悪い場所での感染が多い。
アメーバ赤痢(アメーバ症)
特徴:下痢、血便、発熱、腹痛、重症化すると腸穿孔を起こすことがある。
回虫や鉤虫症
特徴:長期間続く下痢、栄養不足、貧血、腹痛。
消化器疾患による下痢
炎症性腸疾患(IBD)
クローン病
特徴:慢性的な腹痛、下痢(血便を伴うことが多い)、体重減少、発熱。腸管の全長にわたって炎症が広がる。
潰瘍性大腸炎
特徴:血便や粘液便を伴う下痢、腹痛、発熱、体重減少。大腸の粘膜に炎症が生じる。
過敏性腸症候群(IBS)
IBS-D型(下痢型)
特徴:腹痛、ガス、膨満感、頻繁な水様便。精神的ストレスや食事内容が誘因となることが多い。
IBS-M型(混合型)
特徴:便秘と下痢が交互に現れる。ストレスや食生活がトリガーとなる。
消化不良
乳糖不耐症
特徴:乳製品を摂取した後に腹痛、膨満感、下痢が現れる。乳糖を消化する酵素が不足している。
グルテン不耐症(セリアック病)
特徴:小腸でのグルテン吸収不良による慢性下痢、腹痛、体重減少。
内分泌・代謝疾患
甲状腺疾患
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
特徴:過剰な甲状腺ホルモンが原因で、下痢や食欲増進、体重減少が見られます。
副甲状腺機能亢進症
特徴:カルシウム代謝異常が原因で、下痢や便秘、骨の痛みを伴うことがあります。
糖尿病
糖尿病性下痢(糖尿病性神経障害)
特徴:神経障害による腸の運動異常が原因で、下痢が続くことがある。特に糖尿病が進行している患者に見られます。
薬剤性の下痢
抗生物質関連下痢
抗生物質関連下痢(AAD)
特徴:抗生物質(特に広域スペクトル抗生物質)によって腸内フローラが乱れ、下痢が生じることがあります。感染症予防や治療中に見られます。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)による下痢
特徴:胃腸の粘膜に炎症を引き起こし、下痢や腹痛を誘発することがあります。
下剤使用
特徴:慢性的に下剤を使用していると、腸が過敏になり、下痢が頻繁に起こることがあります。
腹部外科的原因による下痢
腸閉塞
特徴:初期には便秘、腹部膨満感、吐き気が現れ、その後下痢が出ることがあります。腸が完全に閉塞する前に、腸内の液体が漏れ出し、下痢のように見えることがあります。
急性膵炎
特徴:上腹部の激しい痛み、吐き気、嘔吐、下痢が伴う。膵臓の炎症が原因で消化不良を引き起こします。
胆嚢疾患(胆石など)
特徴:胆嚢の問題(例えば胆石が胆管を塞ぐこと)によって消化不良や下痢が生じることがあります。
精神的・心理的要因
ストレス関連性下痢
特徴:ストレスや不安が原因で下痢が引き起こされることがあります。過敏性腸症候群(IBS)に見られるように、腸の動きが影響を受けることが多いです。
うつ病
特徴:精神的なストレスや抑うつ症状に伴って、腸の働きが影響を受け、下痢が発生することがあります。
検査と治療方法
下痢が続く場合や特異な症状が伴う場合、医師はその原因を突き止めるために便検査や血液検査、内視鏡検査、CTスキャンなどの検査を行います。
また一般的な治療法として以下のものがあります。
水分補給
下痢によって失われた水分と電解質を補うために、経口補水液(ORS)や水分摂取が重要です。
薬物治療
下痢止め薬(例:ロペラミド):一時的に症状を抑えるために使用されますが、感染性下痢や炎症性腸疾患では使用しないことがあります。
抗生物質:細菌感染が原因の場合に使用します。
食事療法:
消化に優しい食事(例:おかゆ、スープ、バナナ、リンゴソース)を摂取することが勧められます。
脂肪分や乳製品を避けることが推奨される場合もあります。
治療薬の調整:原因となる病気(過敏性腸症候群、炎症性腸疾患など)に応じて、症状を改善する薬が処方されることがあります。
下痢の原因が感染症である場合、症状が軽度であれば自然に回復することが多いですが、長引いたり悪化する場合は、専門的な診断と治療が必要です。ご不安な点がございましたら、西武池袋線「東久留米駅」徒歩2分にございます当院にてぜひご相談ください。